2023年、私どもは本拠点の大阪に続き、
横浜・名古屋でも家族会・個別相談会を開催して参ります。
本年もスタッフ各々の専門性を活かし尽力いたします。

私どもスキマサポートセンターの活動について
ご関心ございましたら、下記ご一読いただけますと幸いです。

長くなりますが、
下記に 2019/07/17付 47NEWS で取り上げていただいた記事を
全文転記いたします。

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犯罪の陰で苦悩する「加害者家族」 
実態と支援の現場から(1)
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犯罪の陰で苦しむのは被害者や被害者家族だけではない。加害者家族について考えたことはあるだろうか。社会的制裁、経済的困窮、一家離反…。加害者家族は人知れず困難の極みの中を歩いている。

6月16日早朝、大阪府吹田市の交番で警察官が刺傷され、拳銃を強奪された事件。逮捕された男(33)=犯行時の精神状態を調べるため鑑定留置中=の父親は在阪メディアの重役だった。事件の凄惨さや動機の不可解さも相まって報道は過熱。取材は家族や親類縁者はもとより、元同級生、雇用先、SNS上のつながりとあらゆる関係者に及んだ。

こうした重大事件が起きた時、社会には加害者サイドを徹底的に暴き丸裸にしてよいバッシングの空気が醸成される。説明責任を問われた父親は代理人弁護士を通じて、警察官や家族のほか、地域や一般の人々に対しても「多くの皆様に不安を感じさせ、大変申し訳ありませんでした」と署名入りの謝罪コメントを出した。その後、間を置かずに「一身上の都合」で役職を退任。表舞台から去った。

海外では「Hidden Victims(隠された被害者)」と呼ばれ、支援の必要性が認知されている加害者家族。だが日本では支援組織は仙台と大阪にある二つの民間団体だけ。あとは一部の弁護士会(山形)で取り組みが始まっている。まだ存在が十分に知られていない加害者家族だが、大阪市のNPO法人「スキマサポートセンター」の佐藤仁孝理事長(36)に彼らが置かれる実態と支援の実際について詳しく聞いた。2回に分けて報告する。
(構成/共同通信=大阪社会部・真下周)


▽父親への罰大きい

この事件では、被疑者の父親が大きな罰を受けていると感じる。犯罪が起きると、まず被害者や被害者家族が守られるべきであることは言うまでもない。加害者には償う責任がある。だが、父親は加害者そのものではないはずだ。それでも世間は許してくれない。

報道が大々的になされると、家族への影響も比例して大きくなる。家族の情報はさらされ続ける。他人の不幸は蜜の味というが、近所や職場でも噂が一気に広がるなどし、彼らにとって絶望的な状況となる。メディアが助長している面は否定できない。

真相究明や教訓を導く報道そのものは否定しないが、人権とのバランスが大事だろう。取材には一定の配慮を願えないものか。家族の生活や人権は守られていいはずだ。

▽事件直後

事件が起きて身内が逮捕されると、家族の生活は一変する。普通の人がいきなり針のむしろに立たされる。今後どうなっていくのか見通しが立たない不安が襲う。だが相談できるところはない。世間から逃避し、孤立する。安心できる材料は何もないと言ってよい。

(身内が事件を起こしたことに)信じられない思いで、心は大混乱に陥る。一方で緊急的な事務は大量に降ってくる。弁護士や警察とのやりとり、勾留中の本人との面会、一時避難先の確保、職場への対応…。裁き切れないが、やみくもに動くしかない。

少し時間が経過すれば、報道も落ち着き、現実感が湧いてくる。混乱は恐怖に変わる。「消えてしまいたい」「死にたい」との思いが強まる。この時期、精神的に生きるか死ぬかのレベルに置かれる家族も多い。

私が常に持ち歩いている携帯電話に、わらにもすがる思いで泣きながら相談してくるほど、家族は追い込まれている。自殺の可能性が高いと判断したケースでは、1週間とか10日間とか、気持ちが落ち着くまでこちらから電話をかけ続ける。

▽「家族への同罪視」

日本は昔から家意識が強く、家族をひとくくりにする文化があるとされる。身内が逮捕されると家族は同罪視されやすい。

周囲から暴言を浴びせられたり、自宅の窓ガラスを破られたり。一番かわいそうなのは家族に未成年がいるケースだ。子どもの情報がSNSのツイッターなどで拡散される。『あいつの兄貴じゃないか?』といった具合に。こうした行動は何も大人だけがするとは限らない。

一般人となると、未成年者の情報であってもリテラシー(適切に扱う能力)が低い人は多く、結果、拡散され続ける。

▽消えず残るネット

記事はインターネットに出ると、消えずにネット空間とどまり続ける。大手の報道機関であれば、一定期間が経てば記事を消してくれることもあるというが、SNSやブログであちこちに転載されると、こちらが消去を要請することはできても、削除する判断は管理者の一存に委ねられる。

▽息をひそめて

家族が自殺に追い込まれないために、味方、支えてくれる人の存在が必要だ。まずは配偶者か子どもになるだろう。たとえ普段、信頼している他人であっても犯罪加害の話はできないと考えるべきだ。祖父母や義理の父母もよくないことが多い。「あなたたちのせいで」と責め立てられ、逆の効果が起きることもある。

夫婦仲が良ければ、二人で協力し合い、外出せずに人目を避けるとか、夜間は家の電気をつけずに息をひそめて過ごすとか、生活に制限を付けてやっていくことになる。

▽区切りの20日

事件発生や逮捕から20日ほど過ぎると、家族の状況は大きく変わる。刑事手続きの流れからすると、検察が起訴を判断するタイミングだ。事件をきっかけとして突然襲ってくるストレスで過覚醒に陥ると、寝られない、眠れない日々を過ごすことになるが、その後、この「20日」の時期を境に急に肉体的、精神的にがくんと落ちてしまうことがある。

2011年の東日本大震災でも、学校の先生らは子どもたちを守ろうと必死で動いた。その後に活動性が急に落ち、反動で抑うつ的になる傾向があった。

▽家族関係の悪化

この時期には、裁判への準備や被害者への対応が求められるようになる。遺族に一本手紙を入れるべきか。現場に献花しにいかなければ。先を見据えて取り組まなければならない課題を前に、精神的にしんどくなる。

必ず起きるわけではないが、家族関係は悪化することが多い。混乱の後に訪れるのは家族内での責め合い。夫婦の不和は離婚話に発展する。兄弟関係に限らず家族の一員が婚約破棄に遭うなどの事態が起きうる。子どもがいれば、転校を強いられることも。名字を変えるために離婚を選択せざるをえないケースもある。

経済的問題も襲う。一家の大黒柱を失えば、暮らしもままならない。生活保護を受給せざるをえない状況にもなりうる。債務関係も頭を悩ませる。逮捕によって住宅ローンや月々の支払いなどが滞る。本人が弁済するのが原則とは言っても、家族が背負うケースも多い。裁判費用や示談金、慰謝料なども見込まれ、それらの負担が重くのしかかる。

裁判が終わる頃には、一山は越えているだろう。本人の処遇も決まり、法的に残された手続きは一時よりは少なくなるかもしれない。家族は自身や本人と向き合う時期に入るが、これが実に長い。「自分の育て方が悪かったのか」「あの時なぜ」。後悔は尽きず、事件を起こした本人への恨みや不満も増大する。影響を最小限に食い止めるため、他の家族への配慮も必要だ。そんな中でも働き続けるつらさは表現しがたく、泣くしかない状況だ。

受刑中も家族の気は晴れない。同じ期間、家族も刑に服しているようなものだ。旅行など贅沢なことはできないし、ご飯はおいしく食べられない。笑ってはいけないような罪悪感にさいなまれる。周囲に思いを吐き出したいが、躊躇する。本人が戻ってきやすい環境を考えると、周囲に知られない方がよいからだ。
 
刑事手続きの中で、本人が社会に戻ってくる時期はいくつかある。起訴後であれば保釈。判決による刑の執行猶予。受刑後の仮釈放。そして満期出所。身元引き受けをするかどうかもそうだが、家族は本人との関わり方を巡って葛藤が大きくなる。

家族が一番望むのは本人の再犯防止と自立だ。「こんな大変なことがもう一度あったら私たちはやっていけない」と思っており、再犯は恐怖でしかない。本人が家族の元に帰ってくれば、家族の生活は再び脅かされかねない。ただ、受け入れることを責任と考える家族もいる。拒否すると「無責任」と責められそう、という葛藤があるのだろう。しかし、現実的に引き受けられない家族もいる。

▽被害者性

加害者家族には被害者としての側面がある。だが同情ではなく、バッシングを集めやすいのが特徴だ。本人はある意味、分厚いコンクリートの塀に守られている。強制ではあるものの、刑務作業に集中できる環境でもある。攻撃対象が塀の中にいることで、社会で野ざらしになっている家族が身代わりになる。

にもかかわらず、受刑者の中には、家族がひどい目に遭っていることも知らず、関心がもっぱら自己保身という者がいる。「執行猶予にならないか」とか「家族にお金を出してもらえるように頼んでほしい」とか身勝手な希望を口にしつつ、反省の態度は一切示さなかったりする。全てのケースではないが、加害者家族の現実としてある。

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「加害者家族」を支援する理由 
幅広く、息長く寄り添う(2)
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犯罪が起きると、ごく普通の家族が突然、加害者家族となり、過酷な状況にさらされる。NPO法人スキマサポートセンター(大阪市)はこれまでに加害者家族から450~500件の相談を受けてきた。理事長の佐藤仁孝さん(36)に支援の実際を聞くと、支援が必要になるタイミングは多岐にわたり、ニーズは多様で、幅広く息の長い支援が求められていることが分かった。
(構成/共同通信=大阪社会部・真下周)


▽家族が持ちこたえたら

私たちが加害者家族を支援する理由は二つある。一つ目は人権上の観点だ。家族の人権や生活、プライバシーは守られていいはず。特に子どもには一切の責任がない。二つ目は再犯防止に資するから。事件が起きると家族は経済的に困窮し、社会的なダメージを受け、精神的にも参ってしまう。本人を見放してしまいがちだ。ここで適切な支援が入り家族が持ちこたえたら、本人が社会復帰した際には受け皿として機能する可能性がある。

加害者家族には三つの側面がある。①犯罪を引き起こした原因としての家族②再犯抑止の観点から語られる家族③被害者としての家族だ。③はこれまで支援の必要性が語られず、ほとんど手つかずだった。ここ数年少しずつ理解が進んできた。

仮に、家族に犯罪の原因としての側面が大きかったとしても、私たちはニーズがあれば家族に支援の手を差し伸べる。『あなたたちが悪い』と言って放置することはできない。加害者が戻ってきた時に同じことが繰り返されるのを防ぐためにも、家族への関与はあった方がよい。

海外における加害者家族支援は数十年前に始まっている。イギリスでは民間の支援団体「Action for Prisoners’ Families」によって、電話相談などの社会的支援が展開されている。逮捕する段階で、警察が家族に支援団体の存在を伝え、つながるようアドバイスしてくれることもあるという。

アメリカには多数の国立と州立の支援機関が設置され、家族療法を用いた介入を行い、効果の検証が進められているようだ。カナダでも、ヴィクトリア州の刑務所の脇には家族がミーティングできる場所が併設されているという。一方、オーストラリアでは被疑者や受刑者の子どもに焦点を当てたグループワークも実施されていると聞く。

▽法律全くない

日本では2005年に「犯罪被害者等基本法」が施行され、犯罪被害者や被害者家族への支援が本格的に動きだした。加害者についても、明治時代からあった「監獄法」が06年に「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」に変わり、罰として刑に服す場所だった収容施設に、再教育の場としての役割が課せられた。

対象者には、薬物依存や暴力団からの離脱指導や性犯罪などの再犯防止プログラムが実施される。就労などに向けた教育も求められている。だが加害者家族については、今も法律が全くない状況だ。

▽多様なニーズ

スキマサポートセンターは2年ほどの助走期間を経て15年に設立した。縦割りに陥りがちな行政が行う支援の隙間を埋めるような活動を目的にしている。24時間対応の無料電話相談をきっかけにして、あらゆる問題に対応していく。事件発生から本人の社会復帰までをトータルに支援する活動を目指している。

私たちのような組織は、社会ではまだ認知度が低い。家族が直接連絡してくるケースもあるが、刑事弁護人を通じてつながることも多い。弁護士の業務は原則、法律的な部分に限られ、容疑者の利益のために活動しており、家族の多様なニーズに応えることは難しい。

私たちの法人は特に心理的なサポートに力を入れており、現在は私を含め、7人ほどの臨床心理士が在籍。職場はさまざまで、私は刑務所で脱薬物や性犯罪再犯防止などのプログラムにも関わっている。普段、児童相談所や病院で勤務している者もいる。

弁護士や社会福祉士らも在籍しており、必要に応じて心理・法・福祉の専門性を生かして、迅速で横断的な支援を心がけている。このほかにも、元校長経験者、不動産関係者、保護司らとも協力関係にある。

▽匿名の相談

過去の電話相談記録を集計し、分析してきた。最新の分は反映されていないが、2015~17年に受けた電話相談121件のうち、最も多かった犯罪の種類は強制わいせつなどの性犯罪で、2位は殺人だった。3位は「不明」。相談者が匿名を希望し、犯罪名も伏せて相談してくるためだ。これだけでも加害者家族が置かれた状況がうかがい知れる。4位は窃盗、5位は覚醒剤と続く。総じて社会的な影響が大きい事件での相談が多い。

相談のタイミングで圧倒的に多いのは逮捕後の勾留中。事件の流れや量刑など今後の見通しが立たないことが相談のきっかけだ。次に逮捕直後、出所後、裁判中、事件後(保護観察などを含め全ての刑事手続きが終了した段階)、受刑中と続く。出所前後は本人の社会復帰に関すること、再犯を心配する相談が多い。

▽女性の相談3/4

相談者は母親が一番多く、次いで妻だ。3番目は本人から。自らは拘束されている状況だが、弁護士などを通じて『家族が悲惨な状況になっているので助けてほしい』といった訴えが届くことがある。

女性からの相談が75%で、男性は10%。残りは支援機関や弁護士から。逮捕者は男性が多いため、女性の相談が多いのは当然かもしれない。ただ子どもの事件でも、相談は主に母親から。父親の中には「あんなやつは知らん」と本人を突き放してしまう人もいる。男女差が大きく出る。

▽子どもの心身にも

相談内容は複合的なケースが多い。相談1件に対し、主な訴え(主訴)を最大三つまで抽出すると、「子ども」に関することが最も多かった。転校や学費のこと、学校での噂、「子どもが心身の不調を訴えている」とした内容が多く、事件の内容を子どもにどう伝えたらいいかや、進路、就職、結婚など将来にどのような影響があるか不安、といった訴えも聞かれる。

主訴の2番目は、「話せる場所が欲しい」というもの。私たちの法人では相談会のほか、同じ立場の人たちが情報交換し、思いを共有できるピアカウンセリングの場を定期的に開催している。

3番目はメディア対応。4番目に感情の整理。5番目には「犯罪の原因を知りたい」が入った。

相談には、加害者本人に関する悩みも含まれる。同様の手法で分析すると、本人の精神疾患に関する内容が最も多かった。その次に再犯(の心配)で、就職のこと、本人との関係について、(身元を)引き受けた後のこと、といった悩みも多かった。

▽危機介入

支援には大きく分けて4段階あると考えている。第1段階は事件直後で、危機介入に当たる。刑事手続きの流れなどを説明し、当面の生活のためライフラインの確保にも奔走する。実際に私たちが転居に伴う家財の整理などを手伝うことも。家族は事件に動揺し、混乱している。勾留中の本人に面会に付き添い、代行することもある。突発的な感情の揺れがあり、自殺防止に心の支援が大切になってくる。

▽社会適応の支援

〝嵐〟のような20日間が過ぎ、起訴の前後で家族は新たなステージを迎える。精神的に少し落ち着く人も多い。これが第2段階。今後の生活や経済的なこと、転職を含め職場関係をどうするか検討していかなければならないタイミングだ。社会適応が求められ、心理や福祉的な対応のウエートが高くなる。家族間で不和も起きやすい。

深刻な場合には複数の心理職が入って、家族全体でカウンセリングを実施する。各位の思いや考えをアドボケイト(代弁し擁護する行為)し、すり合わせや調整を試みる。家族の破綻を回避するための取り組みだ。

子どもがいれば、転校の手続きも必要になる。加害者家族は誰もが、転校先に事件について知られたくないと思っている。どうすれば一番影響を少なくできるか、悩ましい。こうしたケースで私たちが間に入り、学校側に配慮を求めることもできる。

私たちは家族だけでなく本人に向けての支援も行う。家族の依頼であれば、本人も受け入れやすい利点がある。なぜ犯罪をしてしまったかを含め、心理職として本人理解のためアセスメント(評価)を行い、公判では、出所後の再犯防止や自立を目的として支援計画を提出することもある。

▽寄り添う支援

受刑中などが第3段階。家族は本人や自らとじっくり向き合うことになるが、これが長くつらい時期で、事件についての後悔や事件後の苦労、本人への恨み、不満などもあり、感情が揺れ動く。この頃は気持ちに寄り添うような支援が有効で、ピアカウンセリングも効果がある。本人への面会も行い、双方の人間関係の維持に努める。

▽関わりの支援

最後が出所後などに当たる第4段階。家族の関心はもっぱら再犯防止と自立だ。でも「面倒を見切れない」と感じていることも多い。特に本人にアルコールや覚醒剤の依存症や精神疾患があると、家族にとっては、身元を引き受けることは一段とハードルが高いものになる。

この段階では、関わりの支援が中心だ。依存症には、専門的知識を持った支援者や回復者による、定期的な面談を通しての助言や指導が有効となるだろう。

精神障害の人は病識がないケースも多く、危機時に措置入院や医療保護入院といった選択肢があることや、行政のケースワーカーとか各支援機関につながる方法を、家族に対して具体的にアドバイスしていく。

▽誰も損しない

時間の経過とともに、家族の問題も変わっていく。1、2回の電話相談で終わるケースもあれば、数年関わり続けなければならないケースも。逮捕される前であっても、非行や犯罪で逮捕されそうだ、という不安を抱えている家族がいれば、出所後20~30年経っても、加害者本人が亡くなっていても、「つらい」と悩み続けている家族もいる。

あらゆるケースに共通しているのは「どこに相談していいか分からない」「これから私たちはどうしていったらいいのか」という不安だ。阿部恭子さんが代表を務めるNPO法人「ワールドオープンハート(WOH)」(仙台)が2008年に設立され、続いて私たちが大阪で活動を始めた。それまで日本には相談できるところはなかった。加害者家族の問題は、置き去りにされてきたと言っていい。

加害者家族の中には、死にたいと訴える人や、生活がままならなくなってしまう人、精神疾患を罹患する人がいる。支援に入ったある家族から「生きているのはあなたのおかげ」と言ってもらえたことがあった。人助けができて本当によかった。

被害者からすると、心情が許さないところかもしれない。もちろん被害者支援の更なる充実が最優先であることは間違いない。しかし、加害者やその家族が不安定であれば、被害弁済が進まず、被害者が泣き寝入りをせざるを得なくなることも起きる。

加害者家族を支え、守ることは、加害者を孤立から遠ざけ、ゆくゆくは再犯防止に寄与し、社会秩序の維持向上にもつながる。誰も損はしない。身内が事件を起こし、どうしていいか分からず途方に暮れている人はたくさんいる。ぜひ相談してほしい。そして、社会には加害者家族の支援にもっと目を向けてもらいたい。